排尿計測記録システム「ウロレコ」は看護師と患者さんにWINWINのマシンだった
みなさんは入院ってしたことがありますか?
ベッドから動けない状態になったり、麻酔を伴う手術で入院をしたりすると、避けては通れない「尿測」というものがあります。
尿測はその名の通り、体から排出されたおしっこを、看護師さんが計測するものです。
看護師にとっては1日に何度も行わなくてはならない面倒な作業であり、患者にとってはまさに羞恥プレイともいえる苦行……。
そんな「尿測」に、看護師にも患者にもWINWINなマシンが登場したとの噂を聞きつけ、詳しく調べてみました。
君は1日何回の羞恥プレイに耐えられるか
冒頭で伝えた「尿測」ですが、私はあんまりトイレに行く方じゃないし……なんて、軽く考えている人もいることでしょう。
実際、健康な状態の大人は、どれくらいの尿を作り、その程度排出するのか調査しました。
1日にできる尿の量 | 1200~1500cc |
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1回の排尿量 | 200~300cc |
排尿頻度 | 5~6回/日 |
膀胱の容量 | 500cc |
1回の排尿時間 | 15~30秒 |
(参考:排泄ケアナビの資料を元に京トーク編集部にて作成)
人間は、1日に5~6回はトイレに行っています。
しかし、これは尿意を感じて、自分でトイレに行く場合のこと。
病院に入院して全身麻酔で手術をして意識が無い状態では、尿道にカテーテルと言われる管を差し込み、尿はウロバッグと言われるビニールバッグの中に溜まっていきます。
排尿量はバイタルサインとして重要であり、ICU(集中治療室)では30分や1時間おきに観測を行っています。
そして、看護師の尿測は、量の計測に限りません。
もちろん、患者の症状によってさまざまですが、色のチェックや、時にはニオイのチェックまであるんです!
ニオイは目の前で嗅がれることはありませんが、自分の排出した尿を、昼夜幾度となく目の前でチェックされ、その上にっこりと「よく出ましたね~」なんて言われてしまったとしたら、どんな羞恥プレイでしょう。
短ければ1日、長ければ1週間程度のことですが、恥ずかしい気持ちでいっぱいになってしまうのです。
尿測で大事なことは「ウロレコ」が伝えてくれる
上記のような羞恥プレイに怯える人たちを救う(であろう)アイテムが、排尿計測記録システム「ウロレコ」。
開発したのは、世界的な計測機器メーカーであり、食品生産ラインにおける業務用計量機器では世界シェア70%以上を誇る「株式会社イシダ」です。
ウロレコって何ができるの?
「はかりのイシダ」の実力を思う存分に発揮し、尿量の計測は重量センサーでリアルタイムに精密に計測してくれます。
もちろん、時間ごとの尿の表示も可能です。
さらに、尿の中のヘモグロビン濃度を計測し、血尿度を5段階のレベルで表示してくれます。
ウロレコのおかげで、看護師さんは1日に何回も計測する必要がなく、患者さんは看護師さんにおしっこをジロジロとみられることもなくなります。
両者WINWINのマシンなのです。
ウロレコは「合体&連携」でパワーアップ
排尿計測記録システム「ウロレコ」は、単に尿を計測したり、尿の中の血液濃度を測定したりする機械の名前ではありません。
パーツを組み合わせたり、連携して計測データの集積をするなど、排尿を計測し、記録するシステムの総称なのです。
排尿量を計測する「ウロチェッカー」。
血尿を光学センサーで感知・計測する「ヘマトチェックモジュール」。
この2つを組み合わせると、「ヘマトウロチェッカー」として活用可能になります。
さらに、ヘマトウロチェッカーは、ウロロガーシステムに計測データをリアルタイムで送信することで、そのデータは電力カルテシステムにさらに連携されます。
スタッフステーションでは複数の患者でまとめて状態を把握でき、医師は個別の患者さん毎に排尿状態のグラフを参照できるワケなのです。
いわば、戦隊ヒーロー「ウロチェッカー」が「ヘマトチェックモジュール」と合体することで、スーパー合体「ヘマトウロチェッカー」に進化。
ヘマトウロチェッカーはウロロガーシステムにデータを集積。
敵を解析し、戦略を立てられる仕組みを作り上げたと言えます(←あくまでも京トークの主観です)。
開発担当者に突撃インタビュー敢行!
看護師も患者も救われたウロレコの開発者の方に、感謝の気持ちを伝えたい!
株式会社イシダさんにお願いしてみたところ、なんと医療事業企画室長・國崎 嘉人さんに取材OKをいただきました!
――排尿計測記録システム「ウロレコ」を作ったきっかけは何ですか?(國崎さんも羞恥プレイに我慢できなかったに違いない……)
國崎さん:最初から尿を計測する機械を作ろうと思ったワケじゃないんですよ。
最初は、手術中の出血量をリアルタイムに量れないかって、ある医師から相談を受けたことがきっかけだったんです。
でもそれは、結局どうしてもうまくいかなくて。
その開発の中で作ったセンサーを、何かのカタチに活かせないかと思って行きついたのが、尿を量ることであり、血尿の値を測定することだったんです。
――血液からおしっこ…。すごく遠いような、血尿だから近いような?
國崎さん:尿を計るだけなら、いままで培ってきたイシダの技術が活用できたんです。
それも、実はすごく難しい問題がいくつもあったんですよ。
はかりって、正しい重量を図るために水平安定させないとダメなんです。
ウロチェッカーは、ウロバッグを呼ばれる尿を貯めるバックを吊り下げて使用するんですが、
ウロチェッカーはベッドや点滴ポールに取り付けられます。その時毎回看護師がウロチェッカーの水平を調整するのは煩雑なので、ウロチェッカーにジャイロセンサーを内蔵して、傾きによって重量を補正する機能を付けたんですよ。
この補正の部分は、はかり屋にしか分からない部分もあるので、他社が真似できない優位性ですね。
人によっておしっこも血液も濃度が違いますし、その時の体調によっても異なります。
いろんな問題に直面しながら、それを一つひとつ解決していって、2年半ぐらいしてやっとカタチになったという感じですね。
――2年半!?ウロレコの開発にそんなに時間が掛かっているんですか(驚)。
最初の着想から考えると、2年半から3年ぐらいじゃないかと思います。
最初はね、看護師さんの省力化とか自動化とかができれば、喜んでもらえる製品ができると思っていたんですよ。
でも最近は、もう少し先のことを考えるようになってですね。
バイタルサインと呼ばれる心拍数や血圧、呼吸数や体温に加え、排尿など、ウロレコで集めたデータを、PHR(パーソナルヘルスレコード)に集約して、活用できないかと思っているんです。
情報を集め、精査し、AIなどで解析すれば、どんな病気になるかなどを分析することができるようになりますし、それが当たり前になる世界はきっと来ます。
ウロレコは、いままさに医療現場で働く看護師さんの省力化や自動化をかなえる機械であり、来るべき未来に備えた機械でもあるんですよ。
<編集部より>
上記で紹介している内容は、國崎さんにお伺いしたお話のほんの一部です。
ウロレコ開発秘話など興味のある人は、國崎さんのインタビュー記事を読んでみてください。
すっごく楽しいお話が聞けてます!
まとめ
よっぽど特殊な人でない限り、自分の排出したおしっこを人に見られるのは恥ずかしい。
それが、治療に必要だったとしても…。
そして、医療の現場で働く看護師さんにとっては、たとえ尿測といえど命に係わる仕事なので、決しておろそかにはできない。
でも、1時間に1回や1日に何度もなんて、とても大変な作業です。
治療を行う上で大切なバイタルサイン、血圧や心拍数、呼吸数に体温などは、精度の差こそあれ30年も前から生体モニターで表示され、電子カルテへの送信も今では自動で行われています。
しかし、尿測に関しては、まだまだ人の手で行っていることが多く、その労力の軽減と自動化に、ウロレコが力を発揮することは間違いありません。
排尿計測記録システム「ウロレコ」は、今はまさに開発も佳境!
実際に病院で使われるのは、もう少し先のことになるとのことです。
実際に使われるようになったときには、さらに進歩した「ウロレコ」を見ることができるはずです!
この記事を書いた人: 京トーク編集部
京トーク編集部です。
大好きな京都で生活をし、京都に住んでいる人や京都を訪れる人に、もっと京都を楽しんでほしい!と思い、日々記事を更新。
チームの仲間たちと共に京都の魅力を発信していきます!
素晴らしい発想ですね 予防医療の最先端ですね