美容室なのにカフェやイベント?「人が集まる場所をつくろう」YAK KYOTOに込めた想い
京都・西院に2018年新しくオープンしたお店、「YAK KYOTO(ヤック キョウト)」。
こちらはただの美容室ではありません。
店内にはコーヒーなどのドリンクを注文できるカフェが併設され、散髪以外でも気軽にお店に訪れることができます。
また不定期にイベントを開催し、様々な人や新しい文化との発見、交流の場としても親しまれています。
オーナーの渡邉さんは、この道18年のベテラン美容師。
25歳で渡英し、ロンドンの有名サロンで技術を磨かれました。
なぜロンドンの一線で活躍していた渡邉さんが、京都にお店をオープンさせたのか?
なぜYAK KYOTOではカットだけでなく、カフェやイベントをおこなっているのか?
渡邉さんに髪をカットしてもらいながら、YAK KYOTOがオープンするまでの経緯と、お店に込めた想いをうかがってきました。
カットモデルは京トークの名物ライター、黒兵衛くん。
髪がボサボサで見苦しいカットしがいがありそうな具合に髪が伸びています。
インタビューをこなしつつ、彼はどのように生まれかわるのか!?とても楽しみです。
人が集まる場所をつくろう
――店名を「YAK(ヤック)」という名前にした理由はありますか?
渡邉:日本語で「ハハハ」と吹き出し文字にする笑い声を、英語では「YAK YAK」と表現するんです。
ほかにも「YAK」には、べらべら、だらだら喋るという意味があり、カットやスタイリングといった美容メニュー以外にカフェやイベントもやっているので、そこでべらべら楽しく喋ってほしいという思いがありますね。
――なんでカフェやイベントもやっているんですか?
渡邉:お客様から「散髪の用事がないと、普段は美容室に行けない」という意見をいただいていました。
ロングヘアの女性だと、男性のように1か月や2か月という頻度では来れないんですよね。
だったら人が集まる場所をつくろう、人が来る理由をたくさん作ろうと思い、カフェやイベントを始めました。
人が集まって、他愛もない話をするなかで良いアイデアが出たりします。
一人で秘めていて口に出すのを控えていたりすることも、誰かと話すことで新しい可能性が生まれ、大きく前進することがありますからね!
先が見える未来は、面白くない
――渡邉さんは、25歳のときにロンドンに留学したそうですね。
渡邉:それまで東京の美容室で働いていたのですが、行き詰まりを感じていたんですね。
元々好きで始めた仕事だったのに、なんで楽しいと思えないんだろう…と。
東京で勤めていたお店は給料も休みもしっかりしていて、職場の人たちにも特に不満はありませんでした。
ただ上の世代を見て、自分もこうなるという未来が見えてしまった気がして。
そのときに、「先が見える未来は、面白くない」と思いました。
――それで変化を求めてロンドンに渡ったというわけですね。
言語も文化も違うところに飛び込んで、大変ではなかったですか?
渡邉:英語を全くできない状況で飛び込んだので、苦労しましたね。
とりあえず現地の語学学校に通いながら、美容室の働き口を探しました。
学生ビザで行ったのですが、その当時は学生ビザでも週20時間労働することが許されていたんですよ。
だから週20時間は働こうと思って。
ロンドンの美容室をそこら中まわったのですが、英語が喋れないから全く相手にされませんでした。
困ったなと思いながら日々を過ごしていたところ、偶然、日本の美容学校時代の先生がロンドンのメインストリートを歩いているのを見かけたんです。
――えっ、すごい運命的ですね!
渡邉:本当に偶然でした。運が良かったと思います。
その先生に自分の現状を伝え、なんとか美容室で働かせてもらえないかと伝えました。
熱意が伝わったのか、ロンドンの「TONI&GUY」(※)という美容室を紹介してもらうことができたんです。
そこの技術テストに合格後、晴れて働くことができるようになりました。
(※「TONI&GUY」:イギリス・ロンドンに本部を構える、世界的に有名なサロン)
ロンドンで最新のトレンドと技術を学ぶ
――ロンドンの有名サロンで働くなかで得たことはありますか?
渡邉:最新のトレンドと技術を学ぶことができたことですね。
「TONI&GUY」は世界中に拠点をもつ大きなサロンで、技術を教えるアカデミーも持っているんです。
アカデミーは通常授業料を払って通うのですが、私は従業員という立場で行ったので授業料を免除してもらいました。
――アカデミーということは座学もあったんですよね。英語での授業は大変ではなかったですか?
渡邉:言葉の壁は、すごく大変でしたよ!
座学やプレゼンの試験は、英語の文章を丸暗記で乗り切ったりね(笑)
またアカデミーでは「英語が出来ない人は退学」という前例があったので、もう技術で黙らせるしかないと思いました。
とにかくカットの技術を磨いて、最後はカットで一番の成績を残し、卒業することができました。
このアカデミーで最新のトレンドやカットの技術を学べたことは、後の自分の大きな資産になっていると思います。
――渡邉さんの素晴らしいカット技術は、努力を積み重ねたロンドンでの修業時代があるからなんですね!
ワックスで軽くセットしていただいた髪型がこちら。すごくカッコイイ!
黒兵衛くんも、カットの仕上がりに大満足です。
何をやりたいか、答えられなかった自分にびっくり
――ロンドンで働かれた経緯は、すごくドラマチックだなと感じました。
渡邉:そうですね。ロンドンで美容学校時代の先生と再会し、紹介していただいたサロンやアカデミーで多くの経験を積ませていただきました。
何のあてもなしに、ロンドンに行って一人でやろうとして、結果的に人に助けてもらうっていう。
自分一人でやることなんてできないんだな、と実感しました。
――ロンドンで、そのまま働き続けることは考えなかったのですか?
渡邉:それも当然考えましたが、ビザの関係で日本に一時帰国したんですよ。
そこで次の申請に時間がかかり、2年ほど日本にいることになりました。
2年経って再びロンドンに行くと、サロンの仲間たちが待っていてくれたんですよ!
「おかえり!」みたいな感じで。
――おぉ、嬉しいですね!戻ってからの暮らしはどうだったんですか?
渡邉:ロンドンに戻ってからは、5人くらいでシェアハウスに住んでいました。
あるとき、そこで一緒に住んでいた中華系マレーシア人の友だちに
「タカ(渡邉さんの愛称)は、戻って来て何かしたいことはあるの?」と聞かれたんです。
僕は即答できませんでした。
そのとき、何をやりたいのか答えられなかった自分にびっくりして。
すごく良い環境だとしても、一つの環境に慣れていくと飽きちゃう。
変化しないことを自分は「後退」のようにとらえてしまうのかもしれません。
「ロンドンにとどまることだけが答えじゃないのかもしれない。」
「自分の力でお店を持ったり、何かできないだろうか。」と考えました。
自分に変化を持ちたいという気持ちがあるうちは動こうと思い、一度ロンドンを離れることを決めたんです。
そして日本に戻り、私の出身地である福島で美容師として働きだしました。
人が集まる場所があれば、何かが起きて、何かが変わる
――ん?京都ではなく福島だったんですか! 京都にはどういった経緯で移ることに?
渡邉:福島で働きながら、自分のお店を開くための資金を貯めていたんです。
しかし、その途中で東日本大震災が起きました。
新しくお店を開こうと話を進めていた場所があったのですが、町じゅうが大変な状況でそれも不可能になりました。
苦渋の決断でしたが、福島を一度離れて妻の故郷である京都に移ることを決めました。
――大変な状況だったんですね。
渡邉:京都では震災の影響はほとんどなくて。
皆さん普通の生活をされていたので、福島との違いに当時は驚いたのを覚えていますね。
移住した当初は四条烏丸にあるサロンで、店長として働かせてもらいました。
ここで6年半ほど勤めたあと、今年(2018年)独立し、YAK KYOTOをオープンしました。
――京都と福島のお客さんとでは何か違いがありますか?
渡邉:関西、京都は人のつながりがすごい土地だなと感じますね。
来てくださるお客様が、別のお客様の知り合いだったり。
世間って意外と狭いなーと思いますね(笑)
――YAK KYOTOを今後どのようにしていきたいですか?
渡邉:京都は海外の方に人気の観光地であると同時に、この街に魅力を感じ暮らしている外国人も大勢います。
そうした海外の方と一緒に働くということができたら面白いのかなと思っています。
ヨーロッパの人とアジアの人って髪質が違うのでカットの方法も変わってきます。
そうしたカット技術や知識をお互いに身に付け、高め合うことができれば良いんじゃないかなと思います。
また、何より一緒に仕事をすることが楽しいと思いますし。
――渡邉さんはやっぱり、新しいことや面白いことに次々と挑戦される方ですね。
渡邉:自分が何か面白いと思うことに取り組んでいたら、それに共感した人が集まってきてくれます。
そして一緒に何かを取り組むことで、そこには良いグルーブ感や楽しい空間が生まれていくと思うんです。
自分は、先が見えると面白くないと感じてしまうので。
今を楽しみつつ、次につなげていくというイメージで新しいことに取り組んでいます。
また自分が思いもよらないような展開になるのも、すごく楽しみなんです。
例えばお客さんから「普段こんなことをしているから、今度一緒にこれをやりましょう」と言っていただくことがあれば面白いし、それはぜひやってみたいと思いますし。
今までの経験からも、人が集まる場所があれば、何かが起きて、何かが変わると実感しています。
自分の想像を超えるようなことが起きれば、楽しいですね。
――本日は取材をお受けいただき、ありがとうございました。
また髪もカットしてくださり、ありがとうございます。YAKさんの常連になります!
渡邉:ありがとうございました。またぜひいらしてください!
まとめ
今回取材させていただいたのは、YAK KYOTOの渡邉さん。
終始優しい雰囲気で、とても楽しくインタビューさせていただきました。
最初にカットをしてもらいましたが、出来上がった髪型は大満足の仕上がりでした。
人柄だけでなく、カットの技術も素晴らしくて感動しました。
お話を伺うなかで、印象に残ったのが渡邉さんの変化を恐れない姿勢です。
環境に慣れれば次々と新しいことに取り組み、新しい環境に飛び込んでいく姿がカッコイイと思いました。
また出会う人にも恵まれて、周囲に助けられながら進んでこられたというお話を伺いました。
そうした出会いの数々から人が集まる場所の大切さを実感し、美容室だけでなくカフェやイベントを行っておられます。
髪を切るときだけでなく、ふらっと立ち寄ってカフェで談笑をしたり、一緒にイベントをしてみたり。
そこから何か新しいことや面白いことが生まれていくのではないでしょうか。
YAK KYOTOでは散髪だけではない多様な楽しみ方、交流ができます。
興味を持った方はぜひ一度、足を運んでみてください!
【YAK KYOTO】
場所 |
〒604-8846 京都府京都市中京区 壬生西檜町11-3 -2F-A |
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アクセス |
阪急京都線「西院駅」から徒歩7分/嵐電「西院駅」から徒歩5分 |
電話番号 |
075-286-3897 |
営業時間 | 10:00~20:00 |
定休日 |
月曜日、第一・第三火曜日 |
ホームページ | YAK KYOTO |
この記事を書いた人: 白麻呂
【しろまろ】京都の大学に通う色白男子。京都在住10年以上。京都の魅力を地元民の目線からお届け!マンガ、寝ることが大好き。
仲間の誕生日にはかかさずプレゼントを渡す「気遣い大魔王」。
渡邉さんの行動力 素晴らしいですね✨
記事、面白かったです。
若い時の経験は一生の宝、運も実力で引き寄せたのですね。
私も伏見でヘアサロンを経営しています。
昨日、TUBASU会で 京トークさんを知りました。
西院駅周辺も面白ろそうですね。
渡邉さん、是非 これからも 挑戦してください。