「和菓子をもっと身近に!」若き和菓子職人・土田葵さんのまっすぐな想い

2018.12.21 Fri

「もっと身近に、和菓子をおやつとして食べてもらいたい」

まっすぐな眼差しでそう語るのは、和菓子職人・土田葵さん。

京都を中心に活躍している土田さんに、和菓子づくりを始めたきっかけや今後の目標など、たっぷりとお話を伺ってきました。

土田さんの和菓子へのまっすぐな想いを、ぜひご覧ください!

 

社会人4年目。あんこに魅せられて踏み切った転職

 

11月某日。

日差しの降りそそぐ同志社大学の中庭にて、取材は和やかに始まりました。

 

―こんにちは。改めて、本日はよろしくお願いいたします!

 

「こちらこそ、このような機会をいただけて嬉しいです。よろしくお願いします!」

写真を見るだけで伝わるかと思いますが、土田さんはとても優しい空気感を持った女性でした。

 

「和菓子作りを仕事にしていますが、私は製菓学校を卒業したわけではありません。普通の4年制大学の文学部を卒業しました。

和菓子を好きになったきっかけは、私のおばあちゃん。

おばあちゃんが作るおはぎがとってもおいしいんです。食べた人たちがみんな、商品にすればいいのに!と口を揃えるくらい。

 

でも、あるときおばあちゃんが亡くなって、この味を作る人がいなくなるんだってことに気がついたんです。なくなるのって一瞬なんだなあって。」

 

「あとは、学生時代に海外を旅行したときに、食文化の大切さを再確認したことも関係しています。

大学4年生になったとき、「自分は何を大事にして仕事をしたいのか」ということを考えていると、まっさきに浮かんだのは「食文化」というキーワードでした。

その中でも特に、私にとって身近なのは和菓子なんだってことに気が付いたんです。

おばあちゃんの思い出もありますし、季節折々で楽しめるものとしてずっと好きだったこともあって。あと、京都で生まれ育ったことも影響してるかも。」

 

―なるほど。土田さんの中で、和菓子はずっと特別なものだったんですね。

大学卒業後、すぐ和菓子の会社に就職されたのですか?

 

「はい。最初は総合職みたいな感じで、販売の仕事をしていました。

その時期に、いろいろな和菓子を食べ歩いて勉強する中で、あんこの奥深さに気付いたんです。

あんこって、小豆と砂糖と水だけでできてるんですよ。

でも、店によって全然味が違う。それってすごいことなんじゃないかと思って。」

 

―確かに!!

 

「そのことに気付いてから、自分の味っていうものを作ってみたいなと思うようになって。

販売の仕事を3年くらい続けたあと、製造の仕事に転職しました。」

 

―すごい! それって、すごく勇気のいる決断だったのでは?

 

「まあ、趣味程度には作っていたんですけどね。でも覚悟は必要でしたね〜」

 

ニコニコと嬉しそうに職人の道を歩むことを決めた土田さん。決して生半可な気持ちではなかったと思います。和菓子にかける想いの強さを感じました。

 

―製造職に転職されたあとのお話を聞かせてください。

 

「転職先は、国産の材料を使って、すべて一から手作りでの製造を行なっている会社でした。そんな環境に身を置いて働くうち、自分の作りたいものが少しずつ具体的に見えるようになっていったんです。

 

和菓子って、洋菓子ほど華やかじゃないし、食べる機会も少ないですよね。

でも、お菓子の素材にこだわる健康志向の人や、あんこが好きっていう人は確実にいる。だから自分はそこを信じて、ふだんのおやつとして楽しんでもらえるような和菓子を作っていきたいと思ったんです。」

 

あんこが大好きな人、皆さんの周りにも一人はいるんじゃないでしょうか。

でも、洋菓子に比べれば、和菓子が日の目を見る機会というのは確かに少ない気がします。食べる機会も多くはないため、「和菓子が好き!」と気づけるきっかけも、あまりない気がしてきますね。

 

だからこそ「日常に寄り添いたい」のだと、土田さんは言います。

 


みたらし団子。甘い醤油の香りと、香ばしい焼き目には食欲をかき立てられます。

 

修行を経てフリーの和菓子職人へ。自家製小豆の栽培も!

 

―現在はフリーの和菓子職人として働いているんですよね?具体的にどんなお仕事なのか教えてください。

 

「転職先の会社をやめてフリーになったのは、今年(2018年)の春。まだまだ駆け出しです!」

 

―そんなに最近だったんですね!

 

「そうなんです。

『狐菴』という珈琲と和菓子と日本酒が自慢のカフェで、私の作ったあんこを卸したり、あとはイベントに出店して和菓子の販売をしたりしていますね。現在は受注販売が中心です」

 

―なるほど。あと、ご自身の畑で小豆を作っていらっしゃるとか……?

 

「はい。滋賀県に親戚の畑があって、そこで小豆を栽培しています。せっかくやしと思って、今日ちょっと持ってきたんですが……」

 

そう言うと、土田さんは収穫した小豆を鞄から出し、見せてくれました。

 

「私も実際に見るまでは知らなかったんですが、小豆もほかのお豆と同じように、こうやってサヤに入ってるんですよね。」

 

 

―そっか、確かに小豆って豆ですもんね。なんだかかわいく見えてきました。

 

「ふふ、でしょう?」

 

ころんと丸いキュートなフォルムと、高級感を感じさせる深い赤色は、これぞ「あずき色」といったビジュアル。その小豆たちを土田さんはまるで我が子を見守る母親のような眼差しをそそいでいました。

 

煮ることで小豆それぞれ色が変わっていくのだそう。

 

―普段作っているあんこも、この小豆を使っているのですか?

 

「いえ、今は他の小豆も使っています。

でもいつかは、自分の作った小豆で全部まかなえればいいなと思いますね。その頃には農家になっちゃってますけど(笑)」

 

やっぱり一番好き! あんこの魅力にぐぐっと迫る

 

―ちなみに、土田さんが一番好きな和菓子ってなんですか?

 

「えー、なんやろう……。

 

やっぱりあんこ、ですかね(笑)。つぶあんが好きです」

 

―あんこ好きな方の愛ってすごいですよね。ちなみに私の弟も、缶から直接すくって食べていました。

 

「あ、そうそう! 和菓子って、そういうところあるんですよ」

 

―と、おっしゃると?

 

「さっき話した通り、和菓子って洋菓子に比べたらあまりポピュラーじゃないと思うんです。

でも、こうやってお話してると、みんな必ず和菓子にまつわるエピソードを一つは持ってるんですよ。

それを聞くと、私としてはすごく嬉しくて。『絶対に、表面には出ていない和菓子好きの層がいるはず!』 って信じてるんですよね」

 

―話してみると「和菓子が好き!」って人は僕のまわりにもいますね。

あんこの話に戻りますが、土田さんのお菓子に使われているあんこには、すごくいろんな種類がありますよね。どれもご自身で考えているのですか?

 

「ベースにあるのは、製造職として働いていた和菓子屋さんで扱っていたものですかね。

 

あとは、あんこに持ってきたらおもしろいんじゃないか、と思うものをどんどん取り入れるようにしています。旬の食材だったら、かぼちゃとかいちじくとか。

あんこの良さは生かしつつ、いろいろ入れてみることが多いですね」

 


こちらは「種入り南瓜餡(かぼちゃあん)」。

 

―今年、一番人気のあんこって、何味だったんですか?

 

「今年すごく人気で、私も気に入ってたのは、塩レモン餡。

さっぱりしたレモン味で、しかも最後に塩気が残るのでくどくなくて、夏場にもぴったりな味でしたね」

 

―おいしそう! そういうあんこは、最中にして食べるんですか?

 

「そうそう。あ、今日持ってきたんですよ。よかったらおやつにどうぞ」

 

そう言って、豆皿とともに出してくれたのは、招き猫らしい最中。土田さんのトレードマークともいえる、定番の一品です。

 

晴れた日の中庭で最中を食す。

 

 

―めっちゃかわいいですね。これは何餡が入ってるんですか?

 

「これはつぶあん。黒糖が入ってて、コーヒーにも合う味ですよ」

 

―いただきます!

 

かわいいので食べるのがもったいない!

(このあとメチャクチャ味わった)

 

ひと口かじると、最中の皮がぱりっと小気味よい音を立てました。

最中の香ばしさと、あんこのコク深い甘みが一瞬で口の中に広がります。黒糖の風味がなんとも絶妙。

 

―私、実はあんまり和菓子食べないんですけど、これ本当に美味しいです……。

 

思わずうなるようにそう言うと、土田さんは優しく微笑んでくれました。

 

「でしょ? そういう人たちに、「あ、和菓子って意外といける!」って思ってもらえるきっかけを作りたいなと思ってるんですよね」

 

並んでもカワイイ。

 

「必ずしも先取りしなくていい」土田さんならではの視点で和菓子を語る

 

―そういえば、土田さんのツイッターを拝見していて、すごくいいなと思ったツイートがあったんですよ。

「和菓子は季節先取りっていうけど、季節を振り返って食べるのも良いと思う」っていうやつなんですけど……。

 

「ありがとうございます。

和菓子って、基本的には季節を先取りするものなんですよね。その方が乙いうか雅というか、和菓子業界のスタンダードなんです。

でも、必ずしもそうじゃなくてもいいんじゃないかって思う理由が二つあって。

 

まず一つは、単純に「先取りしすぎるのもしんどくない?」ってこと。

ハロウィンが終わった次の日にはもうクリスマスソングが流れてる、とか、真夏に秋服が売られ始めて、秋にはもうセールやってる、とか(笑)

私たちが生活する中で、そういうことって多いじゃないですか。だから、和菓子を通して「もうちょっとゆっくりでいいんじゃない?」ということを言えればな、と思っています」

 

「ゆったりと和菓子を楽しんでほしい」と土田さん。

―ほんとにそうですよね。

 

 

ちなみに、もう一つは?

 

「もう一つは、普段私たちが「季節の変動に振り回されすぎている」こと。

特に今年は、台風も多かったし、11月なのに汗ばむくらい暑い日もあったりして、気候の変動が激しかったですよね。そういう変化に振り回されてばかりいるのもしんどいので、和菓子を食べることで一度過去を振り返って、ほっと一息ついてもらえればな、と」

 

―日常に追われるだけじゃなくて、過去を振り返る時間をゆっくり持つことも大切ですよね。

「文月のおすそわけ」おばあちゃんのおはぎ2種類、すだちのお団子、月からウサギ

(※「季節のおすそわけ」は、来年度準備のため現在お休み中)

 

 

 

いつか京都で和菓子屋を。変わらぬ想い。

 

―では最後に、土田さんの今後のお話をお聞きしたいと思います。

ズバリ端的に言うと、土田さんが和菓子を作るうえでの目標とは?

 

“もっと身近に、和菓子をおやつとして食べてもらいたい“やっぱりそれに尽きますね。

 

今すでに和菓子が大好きで、よく食べ歩いてるっていう方よりも、「好きやけどそんなに食べていない」っていう方とか、ちっちゃい子どもたちにもっと食べてもらいたい。

それこそ、さっきの桃小町さんみたいに「食べてみたら案外いけるやん!」ってなってほしいんです」

 

―潜在的なファンのきっかけになりたい、ということですよね。

そういえば、土田さんは子ども向けのワークショップも主催されているんだとか。

 

「そうなんです。月に一度、だいたい6〜10人くらいの子どもたちと一緒に和菓子を作っています。

私が和菓子好きになったきっかけがおばあちゃんのおはぎだったこともありますが、「幼いときに食べたことがある」という記憶は本当に大切だと思うんです。だから、この経験が誰かの記憶に残ればいいなあ、と」

 

―確かに、舌の記憶ってずっと長く残るものですもんね。

今は卸しを中心にお仕事されているとのことですが、将来的にはご自身でお店をやることも考えているのですか?

 

「そうですね。今はとにかく私の和菓子を食べてもらえる機会を増やしたいので、イベントの出店をもっと行うようにして……やっぱりいつかは、自分のお店を持ちたいと思っています。

生まれ育った京都の地で、和菓子のお店を開きたい。それが夢ですね」

 

インタビューを終えて

 

終始笑顔で、やわらかな雰囲気をまとった土田さん。

しかし彼女が発する言葉の端々には、強い意志がこもっているように感じました。

 

土田さんは、大学卒業後、販売のお仕事を経て製造職へと転換されました。その後、修行をしながら自力で資格を取得したり、食べ歩きを重ねたりと、和菓子を極めるためにさまざまな努力をされてきたのだといいます。

 

「専門学校に通っていなくても、職人になれた。目標があったからがんばれた」

この言葉通り、物事を極めるために何よりも大切なのは「やりたい」という純粋な気持ちなのだと、改めて気づかされました。

 

取材前後にも楽しくお話をしてくださる、そんな土田さんのお人柄は気さくで丁寧で、土田さんの作るお菓子と本当によく似ています。

この記事を通して、和菓子の魅力はもちろんのこと、ぜひ土田さんの人となりにも触れてもらえたらと思います。

 

皆さんは和菓子、好きですか?

「そういえば最近、食べていないかも……」という、そこのあなた!

今日のおやつは和菓子に決まり。おはぎに最中、お団子や羊羹もいいですね。

いつものケーキはやめて、今日は優しいあんこを召し上がってはいかが?

 

(本記事に掲載の写真は、筆者の撮影と土田さんのSNSより引用いたしました。)

 

【お菓子aoi  土田 葵さん】

Twitter:お菓子aoi

Instagram:@okashi_aoi

この記事を書いた人: 桃小町~Momonokomachi~
愛が重めの女子大生。歌手のaikoとペットのうさぎを溺愛している。生クリームと白子が大好物。

この記事へのコメント

1件のコメント

コメントする

※コメントは京トーク編集部にて確認後、公開いたします。
※お名前は未入力でもOKです。お気軽にコメント下さい!

関連記事