海外にも日本の書道の楽しさを広めたい。
“世界を旅する書道家”新見知ふみ
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御所南で書道教室を主宰しながら、アジアやヨーロッパなど世界各国を回り、日本の書道を世界に広める活動をしている女性書道家・新見知ふみさん。
“書道を学べるからという理由で大学を選んだほど書道が好き”という新見さんだが、大学卒業後に書道教室を開いたわけではなく、一度は航空会社へ就職したことがあるそうです。
しかし、現在は好きな「書道」で生きていくという道を選んだ新見さんは、どんな思いで書道教室を開催しているのでしょうか。
また、日本だけに留まらず、世界へと日本の書道を広める活動をしたきっかけから、海外でどのように日本の書道を広めているのかまで、詳しくお話を聞いてきました。
好きなことを仕事にしている。だから今はストレス0生活。
―書道はいつから始められたのですか?
母が書道教室をしているため、もう物心ついた頃からですね(笑)。
小さい頃に書道教室に行っていた人のなかには、親に言われて無理やりなんてお話もよく聞きますが、私は書道が好きで、大学も書道が学べる大学を選んだほどなんです。
書道と言えば中国が本場なので、在学中には中国へ書道留学に行った経験もあります。
ただ、短大を卒業してすぐに自分の書道教室を始めたわけでありません。卒業後は国内の航空会社に就職し、中国に3年間駐在していました。
―航空会社ですか?学生には人気の職業ですし、かなりの難関とよく聞きます。でも、書道への道はあきらめてしまったんですね…。
航空会社に就職したのは、中国への留学経験がありましたし、英語が得意だったことを活かせる仕事だと思ったからですね。仕事はとてもやりがいがありましたし、毎日とても充実していました。
でも、やはり大好きな書道に関わる仕事がしたいという気持ちはずっとあったんです。
母の仕事や周りの書道に関わる人たちを見てきて、仕事にするのはとても難しいと考えて、一度は違う道を選びました。
就職してからも母の書道教室のアシスタントは学生の時から時間があれば率先して続けていましたし、3年間勤めた後、自分で書道教室を始めることにしたんです。
―やはり、好きなことを仕事にするっていうのは難しいものなんですね。
そうですね。でも、私はいくつか教室をしていたり、海外へ出かけて日本を書道を広める活動をしているので忙しい毎日ですが、好きなことを仕事にできているのでストレスは0なんですよ!
―ほんとに書道がお好きなんですね。
書道をしていると、昔から心が落ち着くんです。
それに、書道は自分が楽しんでいないと、いい字が書けないんです。自分の気持ちのあり様がしっかりと仕事に表れてしまう…。そういうところが、難しくもあり、好きだと思うところですね。
“他にはない“教室を目指して
―こちらの教室では、外国の方も多いと聞きました。外国の方を受け入れている書道教室って珍しくありませんか?
地元の書道教室で、外国人向けの体験教室をやっているところなんて、私も自分の教室以外は聞いたことがありません(笑)。
でも、同じ空間に、外国の人と地域の子どもたちや大人まで、みんなが一緒に書道をしているって、すごくいいと思いませんか?
地元の子どもが外国の方に勇気を振り絞って英語で話しかけてみたり、外国の方が日本の「本物」に触れたりって、とても素敵なことだと思うんです。
国籍や年齢なんて関係なく、みんなで真剣に、楽しく学べる環境を大切にしていきたいと思っています。
―確かに素敵です!他にもこの教室ならではという特色がありそうですね。
「デザイン書道」といって、絵を描くような自由な発想で書く書道も行っています。
漢字を正確に書くというより、その字が持つ意味をもっと見た目で分かる雰囲気で書くのですが、これが非常に好評なんですよ。
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(デザイン書道の作品一例)
また、大文字山に筆をもって出かける「筆さんぽ」や、大筆でのパフォーマンスなど、教室の生徒さん以外も参加できるイベントも開催しているんです。
毎月1回のペースなのですが、学生や大人、子供の区別もありませんし、外国の方もたくさん参加してくださっています。
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(筆さんぽの様子)
―(写真を見て)これが「筆さんぽ」ですか!文字だけではなく、みなさん自由に書いているんですね。すごく楽しそうです。
床一面にみんなで文字を書くって、そんな経験はなかなかないですよね。それに、外は開放感があって気持ちいいんですよ。参加する方々には、非日常感を楽しんでもらっています。
― 書道というと室内というイメージでした。なぜこうしたイベントを始めようと思ったんですか?
最初のきっかけは、たくさんの人に書道の楽しさを知ってもらいたいと思ったからなんです。
教室で行うお稽古は、字を上手に書けるようになることがいちばんの目的です。私も教室ではしっかりと基本を踏まえて、きれいな文字を書けるように指導しています。
でも、先ほどのお話したデザイン書道や教室の外で行うイベントでは、「楽しい」や「おもしろい」ということを大事にしたいと考えています。
「書道ってこんなのもありなんだ!」という発見を、私以外の人にも体感してほしいと思っていますし、そう思ってもらえると私も楽しいんです。なので、とにかく思いついたらすぐに行動するようにしています。
新見さんが書道家として世界を旅をする理由とは?
ー先ほど、海外にも日本の書道を広めている活動をしていると伺いましたが、それはどのような内容でしょうか?
私は「書道を世界へプロジェクト」という、書道の楽しさを世界中に広めるプロジェクトを開催しています。
このプロジェクトは、各国の日本語学校や大学から依頼を受け、現地の人たちに書道体験を行ったり、大きな筆でパフォーマンスをしてみせたりが多いですね。
日本の文化に興味がある外国の人も、書道をしたことがあるという人はとても少ないんです。
プロジェクトに参加して、書道体験をした外国の人からは、
「日本の書道の歴史と同時に、美しく書くすばらしさを学びました。」
「初めてでしたが、実際に筆で書く楽しさを実感して、貴重な経験になりました!」
など、ありがたくもうれしい言葉を数多く頂いています。
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(トルコのアクデニズ大学にて。書道体験の後にみんなで記念撮影)
―今までどんな国に行かれたんですか?それに、今年(2019年)はどちらに行く予定でしょうか?
今までにはイタリア、インド、カンボジア、イギリス、フランス……。今年はすでにトルコとギリシャで開催しましたし、8月にはカナダに行くことが決まっています。
ー本当にいろんな国に行っていて、まさに世界を飛び回っているんですね!でもなぜ、海外に日本の書道を広めようと思ったのですか?
理由は2つですね。
1つは、私自身が書道を世界に広めたいと思ったからです。
私の教室には、外国の方々が書道体験に来てくれているのですが、日本に来て書道を体験している人なんてほんの一握りですよね。
「日本に来られない方にも書道を伝えたい!」 そう思って、私が伝えに行くことにしました(笑)。
―日本に来ていなくても、日本の文化や書道を体験したいという人は確かに多そうですね。
もう1つの理由は、旅が私を育ててくれるからですね。
外国に行くと、今までは写真や映像でしか見たことのないものが、私の目に“本物”として飛び込んできます。
百聞は一見にしかずではありませんが、本物が放つ圧倒的なオーラを感じたり、本物を見たりすると、私は自分の目が磨かれていくことが実感できるんです。
それに違う言語や文化、習慣や宗教に触れることが刺激的で、見識を広めるとともに、私が日本人であることを実感させてくれるんですよね。
日本人に生まれて本当に良かった、いまを生きる自分に何ができるのかを、考えさせてもくれます。
そうやって旅で得られた体験や感じたことは、日本に帰ってきてお稽古やイベントにどんどん活かしていきたいとも思っています。
書道を広める活動を続けたい
ー今後の目標を教えていただけますか?
書道という日本人が昔から大切にしてきた文化を、もっといろんな人に、身近に感じてほしいと思っています。
日本では小学校でも授業で書道を習うので、日本人の書道人口は結構多いんです。でも、書道の作品を絵のように鑑賞したり、自由に楽しんだりっていう人はとても少ないと思うんですね。
だから、普段のお稽古では書道の基本を学んでもらい、イベントでは日本や海外の人に面白さや自由度の高い書道を広めていきます。
多くの人が書道をもっと身近に感じて、もっと好きになってもらえたらと思っています。
―日本でも教室の生徒さん以外で参加できるイベントがあるんですよね?私も参加できるイベントを教えてもらえますか?
9月8日に、京都文化博物館別館で行うことが決まっています。現在、監督を立てて打ち合わせは進んでいるのですが、内容に関しては秘密です(笑)。
今までにない、新しいチャレンジを考えているんですよ。
―えぇ~、内容は秘密なんですね。ではぜひ、公表できるようになったら教えてください!
その時はぜひ、いらっしゃってください。
これからも、ちょっとひねりのある、新しいことに挑戦し続けようと思っていますので、楽しみに待っていてもらえるとうれしいですね。
インタビューを終えて
インタビューの最後に、イマドキの若者へのメッセージを頂きました。
「今の若者は、とても優秀だと思います。
でも、毎日をなんとなくこなしていて、突出している人が少ないように思うんです。
常識にとらわれなくていい。
やりたいことを、好奇心の赴くままにどんどんチャレンジしていったらいい。
失敗することもあると思うけど、やらないよりはるかに得られるものがある。
だから、とにかくやってみてほしいと思います。」
女性書道家として世界を股にかける新見さんも、数々の失敗を重ねてきて“今”があるそうです。
生き生きと仕事をしている人は人一倍、いや、それ以上の挑戦と失敗を繰り返してきて、自信を持って今を生きているのだと、あらためて感じられたインタビューでした。
新見さんは、一緒に書道を広める活動をする仲間を募集しています。
・語学を使った国際交流スタッフ
・幼児かきかた指導スタッフ
・事務方スタッフ
こんなチャンスは滅多にありません!
新しい書道を広めるサポートをしませんか?
・カリグラフィー京都 知ふみ書道にお問い合わせ
TEL:080-6327-2772(対応時間09:00~21:00)
MAIL:inkyoto7@gmail.com
新見知ふみプロフィール
短期大学に在学中、中国の復旦大学と北京大学へ書道留学を経験。大学卒業後は、国内の大手航空会社に勤め、3年後に書家として独立。
書道教室「カリグラフィー京都 知ふみ書道」を主宰しながら、世界中で日本の書道を広める活動を行っている。
女性で、かつ新たな世界にチャレンジする功績が認められ、2014年に「京都女性起業家賞」を、2018年には「京都はぐぐみ憲章」を授賞。
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この記事を書いた人: 黄助
【きすけ】好きな言葉は「身近な人から幸せに」
人と自由と甘いものが好きなインターン学生。
大仏、富士山、琵琶湖などの日本一を目の当たりにし、現在は世界一に興味アリ!
何度も読ませて頂いています!学校の研究で書道を調べているので、このインタビューをいつも読んで、まとめています。新見さんのように、世界に書道を広めているのはとても凄いと思いました。とても分かりやすいです!ありがとうございました。