「京都ってやっぱりイケズなの?」ビジネスで役立つ京都人対策!
ちまたでは「京都人ははっきりとモノをいわない」「裏表がある」「だからイケズ」などと思われているようです。
この世間に飛び交う“京都人イケズ伝説”。でも避けては通れない“京都人とのビジネス”。
そこで今回は京都人とビジネスで上手につきあう方法を中心にご紹介し、知っていると安心、“京都の話法”もお届けします。
生まれも育ちも大阪の堺である“堺人”の私が、最近、京都の企業さんとお仕事をすることになったと友人にいうと、「大丈夫?嫌味なこといわれていない?」と心配してくれるありさま。
まずは敵を知りましょう。というわけで、京都人のことをよく知っていただくために、真の京都人が京都人たるゆえんから紹介しますね。
真の京都人って?
真の京都人と認められるのは京都市内、中でも祇園祭の山鉾が立つところ。
三条通や四条通を中心にしたあたり(洛中・らくちゅう)に暮らす人が本当の京都人であり、それ以外(洛外・らくがい)は京都人ではないといいます。
洛外の京都人は洛中の人々から「あんたらはほんまの京都と違う」といった雰囲気を醸し出されて育つのだそうです。
京都人からみれば東京も大阪もみんな“よそさん”
当然、私のような他府県の人は、京都人からみれば“よそさん(よそもの)”。
また、京都人が京都で商売をする以外は外国人のみならず、なんと日本人も等しく外資系と位置づけされるといいます。
東京や大阪の人が商売をしている女子に人気の京都風町家カフェなど、「あの店、外資系やから」と陰でいわれているのだとか。同じ商売仲間とは思われず、明確な線引きをされているのが理由です。
かつての平安京の中心部「洛中」。この碁盤の目状に広がった鉾が立つエリアこそがコアでめんどくさい京都なのでしょうね。
ならば、このディープな京都人とのビジネスにおいて、どのような点に注意する必要があるのか、段階を追って見ていきましょう。
京都人とビジネスで上手につきあう方法
京都人とビジネスで上手につきあうためには、6つのステップがあります。
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順番に説明しますね。
ステップ①よそさんにはわからない曖昧な「イエス」「ノー」
転勤で京都に来ただとか新しい取引先がたまたま京都人だったなど、ビジネスで京都人と関わらなければならない場合、まず知っておきたいこと。それは、京都人がなかなか本心を見せないということです。
特に男性はクールで本音と建て前を上手に使いわけているといわれます。私の身近な仕事仲間に「京都の人と仕事をしての印象は?」と参考までにたずねたところ即、「お上手(おじょうず)!」との答え。
ビジネスにおいても計算高いかけひきを行って、商談成立に持ち込むからだそうです。
本心をみせない…、これはイエス、ノーがはっきりしないところに原因があるのでしょう。
お仕事で京都の企業さんにアイデアを提案したとき、なかなかお答えがいただけず「どうなの?」とモヤモヤしたことがありました。
後日談として、実は誠にていねいなお答えがかえってきたのですが、相手への気遣いから言葉を濁してしまい、ストレートに「ノー」とはいえないのだなということを学びました。
これはある意味、仕事相手としては誠実だともいえますね。長いおつきあいが命の京都のビジネス。
よそさんにはわからないイエス、ノーですが、敬意を表しながら今後も息の長いおつきあいをするのだと思って、うまく関係を続けていくのがよさそうです。
ステップ②遠まわしの表現にかけては天下一品
京都人はよく遠まわしの表現をします。
ある物ごとに対しての批評など、たとえ良くないなと思っていても角が立たないようにいうようです。
相手に恥をかかせず、しかし主張はしっかりとし、自分の望む方向に落とし込みます。
先の私の後日談にも同じようなことがありました。
例えば大阪の企業さんに同じようにアイデアを提案した場合、「今回は、はっきりいって、おもしろくないわぁ」とミもフタもないいい方をされるところ、京都の企業さんの場合、「こちらも同じようなことを考えているのだけど、それを行うにはしっかりと再構成する必要があります。ならばアイデアの中にあるココのキーワードをふくらませてみてはいかがでしょうか」
みごとなものです。これは、ようするにあなたのアイデアは使えませんが、もっとこうすれば良くなりますよ、といっているわけです。
大切なのは相手の自尊心を傷つけないこと
ここからよそさんが京都ビジネスで学ぶべき戦術。
それは、高飛車な態度で交渉を押し切るということも手ですが、少し下手(したて)に出て、相手の自尊心を傷つけないようにすることも大事だということです。
主張はタイミングといいまわしが勝負のようですね。
ステップ③イケズの代表「ぶぶ漬け」にみる商談の判断力
イケズな京都人を語るとき、よく引き合いに出されるのが「京都の茶漬け(ぶぶ漬け)」。
帰りがけにぶぶ漬けを勧められたお客が、まに受けて礼儀知らずと笑われたお話。
桂米朝さんの名調子でおなじみ上方落語の『京の茶漬け』や江戸の小咄(こばなし)にも出てきますので、関西以外でもよく知られるところです。
このエピソードから京都人の誘いは「断ることが前提だ」と思っているよそさんですが、実はそうではないようです。
本当に食べていいものかどうかは、勧められた人の判断にかかっているのです。
ビジネスに置きかえると、「商談を受けるべきか否かの選択を間違えるとえらいめにあいますよ」と、コアでめんどくさい洛中のオキテをわかりやすく伝えたものなのです。
京都人の心の機微が読めるようになれば…
ならば本当に京都人が目の前のビジネスに乗り気かどうか、それをみわける眼力を養わなくてはなりません。
要は判断力と想像力を最大限にもってビジネスに挑む。これは何も京都人にかぎったことではなく、当然のように広くビジネスにいえること。
京都人の心の機微が読めるようになれば、京都の怖さをやわらげるテクニックが徐々にわかってくるかもしれませんね。
ステップ④「考えさせてもらいます」は拒絶、ならば相手を立てて交渉終了
「考えさせてもらいます」―これも広く知れ渡っているイケズ作法のひとつ。
ビジネスの場、特に京の碁盤の目状に広がるエリアの相手にそう返されたら、イコール拒絶の意思表示だということ。ビジネスの標準語としての「検討させていただきます」と心は同じということです。
「そういわれるのでしたら、考えてみます」―この場合は50%くらいの可能性は出てきたということでしょうか。
いずれにしても積極的な承諾の意味合いは含みませんので、それを前提に手立てを講じる必要があります。
相手を立てることを忘れないで
よそさんが先方にお断りをしたい場合、「お話しをうかがわせていただいて、ありがとうございました」と相手を立てることを忘れないでください。
頭ごなしに「無理」とはいわないこと。自己防衛のためにもスマートに交渉を終わらせるのが京都的話法です。
ステップ⑤「まぁ、よろしくお願いいたします」ってどのくらい承諾しているの?
拒絶が「考えさせてもらいます」ならば、承諾は「よろしくお願いします」。
例えばプレゼンを終えて、打ち合わせの場でていねいにこういわれたら、これは商談成立。
しかし、エレベーターホールまで見送ってくれた担当者が頭を下げてこういった場合、これは単に別れのあいさつですね。
けれど、何げなく発せられる言葉だけに隠されたシグナルを見落としがちになります。
その前置詞で意味を大きく違えるということを。
「それでは(ではまた)(まぁ)、よろしくお願いいたします」―こういう余分が接続されている場合は、まず成果は見込めないでしょう。
というのも微妙に変化している部分に「とりあえず」「今回のことは」「なかったことにして」がひそんでいるから。
「よろしくお願いいたします、てことで」―これなど社会人として一応は「よろしく」といっておいて、こちらの話しなど聞いていなかった証拠です。
「くれぐれも、よろしくお願いいたします」―と念を押される場合。
これは脈アリ。ただし「なにとぞ」「どうかひとつ」と同じように強調のヒトコトが挿入されているのですから、少し不安視されていることもお忘れなく。
相手が心配することがなければ何も装飾をほどこす必要などないですものね。
ステップ⑥「もったいぶる」最後の難関にはダメ押しが効く
「よろしくお願いいたします」で成立した商談。ここで安心してはいけません。
このあとに「だけど」とつながる最後の難関が待ち受けています。
「くれぐれも予算オーバーだけには気をつけてもらう必要がありますね」
こんなことを平気でいいだすのです。
なぜならビジネスの場において、仕事を発注する側は「もったいぶる」からです。
特に京都人とのビジネスで忘れてはいけないこと。それは大阪人以上に金銭感覚はシビアで手厳しいことです。
くれぐれもこの言葉に突っかかったり、くどくどと説明を繰り返したりしないでくださいね。
「いやぁ(笑)、それには“本当の予算”を聞かせてもらう必要があります。
今ご提示いただいているのがそうでしたら、もちろん予算内でさせてはいただきますが」
このようなユーモアを交えたダメ押しをして相手の口を封じてしまいましょう。
京都人も本気で懸念しているのではなく「この仕事、失敗しては困りますよ」的な念押しだなと。
イケズを知れば自分に向けられた言葉にひそんでいるさまざまな意図を予想できるようになります。イケズ心は辛辣な言葉で相手を倒すだけでなく、より良い関係を築くためにも使えるということですね。
さらに、おつきあいをする上で大切になってくるのが言葉です。京言葉はわかりにくく難しいと感じるよそさんのために、うまく言葉を読み取るヒントをお伝えしていきます。
知っていると安心!京都のお言葉“京話法”
遠まわしな表現で意図を伝える“京話法”。
京都の言葉に慣れ親しむためにも、その意味合いを知っておきましょう。
【よろしいな】:「よろし」に隠された枕詞「どーでも」
「これ、ちょっとしたプレゼント」と手渡すよそさん。
「こんないいものもらって、よろしいんですか?」という京都人。
この「よろし」。本当に喜んでいると思っていいのでしょうか…。
やわらかい相づちのような「よろし」には、隠された枕詞(まくらことば)「どーでも」がついているかもしれません。
「こんな(どーでも)いいもの、くれるのですか?」という気持ちのみえ隠れがあることも知っておいてください。
これは、よそさんが気分を害することのないよう気を遣ってくれているのですよ。本当に心からうれしいものだったら京都人はこのようないい方はしないでしょうから。
【ほんまに】:真理を求め揺れ動く「ほんまに?」「ほんまに!」
言葉がストレートではない京都。
それを完全に読み解くにはネイティブ京都人でも難しいようです。
そこでちょっとしたマジックワードで言葉の真意をはかります。それが、「ほんまに?」です。
「まぁ、きれいなお洋服。よーうつらはる(似合ってる)」と愛想の京都人A。(ただのあいさつ)
「ほんまに?」と真意をはかる京都人B。(本当にそう思っているの?)
「ほんま、ほんま」と軽い口調で返事をする京都人A。(軽いあいさつ、てことで)
これが、「ほんまに、ほんま!」と念を押すような返事が返ってきたら、それは「ほんまに」「ほんま」なのです。
逆なら、鼻で笑いながら「ほんまに(クス笑い)」。
好奇心なら「ほんま」のあとに「で、どこ行くの?」と聞かれることでしょう。
皮肉の場合は「ほんまに」は抜きで「高かったんちがう?」とケースバイケース。
京都人の「ほんまに」は、ほんまに疲れます・・・。
ただ単純な「ほんまに?」なら英語の「Really?」感覚でよそさんでも使ってみましょう。
攻撃力はないけれども、可能性を秘めた言葉になるでしょう、ほんまに。
【おおきに】:すべてが「了解」ではない「おおきに」
京の「おおきに」を直訳したら「ありがとう」、と思ったよそさん。京都ではとんでもないめにあいます。
気が進まなくてどちらともはっきり答えができないとき、また、ノーの否定のときも多く使われます。
例えば、保険の勧誘でのひとコマ。
「そんなわけで、社員さんのためにも、ぜひこの保険に入っていただけたら」と京都の保険屋さん。
「おおきに(どうも)、考えときますわぁ」と京都の社長さん。(100%ありえへんけれど)
「そうそう、コーヒーでもいれましょか」と話しを転換させる京都の社長さん。(もう早く帰ってください)
「はぁ、おおきに(けっして飲みませんがお礼だけ)」と京都の保険屋さん。(おじゃましました)
このように「おおきに」を即「了解」と解釈せずに、「おおきに」のあとにくる会話や表情からしっかりと相手のいいたいことをくみ取る必要がありますね。
【ほな!】:“京都ほな”と“大阪ほな”」は違います
「ほな!」は大阪人もよく使う言葉ですが、京都人の「ほな!」にくらべて、少し力の抜けた使い方をし、「ほな、食べに行こか」「ほな、こっちでええわ」という具合に何かにつけて結論づけたいときに枕詞のように添えられます。
“大阪ほな”は何かを決定するときにやわらげる役割りを果たし、言葉の険を除きます。
京都人の「ほな!」は、もっぱら別れのあいさつのときの前置詞に登場します。
「ほな、おおきに」「ほな、ぼちぼち」と、その場を切りあげる際の“京都ほな”です。
親しい間柄になると「ほな!」だけで済ませてしまうようです。
京都では「ほな!」といったらドライにサヨナラなのは、(サヨナラだけが)人生のようで面白いですね・・・ほな!
【おいでやすorおこしやす】:歓迎されているのはどっち?
ビジネスだけでなく、旅行で京都を訪れるよそさんでも必ず一度は聞く言葉が「おいでやす」と「おこしやす」。
京言葉には同じように聞こえて、しかしその使われ方が微妙に違う言葉があり、それがこのフレーズ。
さて、問題です。歓迎されているのはどちらでしょうか。
予約はしていないけれど、外からみるとあいている席がありそうな評判の割烹。
そこで思い切って入ってみると、
「おいでやす」と割烹の主人。
「すみません、予約はしていないのですがお願いできますか」とよそさん。
「すみませんなぁ、今日はあいにく予約で満席でして」と着物姿の女将が出てきて頭を下げます。
仕方がないかと外に出ようとして、入れ替わりのお客さんとすれ違う。
すると、「おこしやす、ようこそ」と女将の明るい声が聞こえてくるではないですか…。
「おいでやす」は、お店に入ってきたお客さんすべてにかける言葉。
「おこしやす」はようこそ来てくださいました、という歓迎の言葉。
どちらも歓迎しているように聞こえるところがミソ。京都のお店で区別をされることはよくある光景。
それをお客さんに気づかせないという配慮は、いかにも京都ですね。
【ややこし】:京都人にかかったら安倍首相もトランプ大統領も「ややこし人」
京都人はよそさんからみたら、何を考えているのかわからない「ややこしい人」なのですが、当の京都人は、あらゆる問題はこの「ややこし」が、結果を引き起こすモトの要素だと考えています。
ビジネスでうまくいっていない会社を指して「ややこしいことになってるらしいで」と噂し、手に余る仕事を押しつけられたら「そんな、ややこしことでけへん」と腹をたてる。
誰か知っている人が、結果的に犯罪に手を染めることになっていたと聞けば「なんや前から、ややこし人やったからねぇ」とため息をもらしながら感想を述べます。
大阪人もこの「ややこし」を使いますが、もう少しもつれた状況を説明する形容詞として用いることが多いようです。
京都人的な使い方があまりにもおおざっぱであり、京都人にかかったら、安倍首相もトランプ大統領も同じ「ややこし人」になってしまいます。
それぞれが抱える問題の大きさは関係なく、ややこしいものはややこしと、バッサリ一刀両断。
曖昧で何を考えているのかわからないといわれる京都人。
原因を「ややこし」に置きクリアーにしているあたり、なんともクレバー。
「ややこし」にかぎらず、京都人は言葉に深みや広がりを持たせることで、くどくどした説明を避け相手の読みに任せる。
言葉の綾(あや)という実に美しい表現文化こそ、京都を京都らしくさせているのでしょうね。
まとめ
“よそさん”の視点から、どうしても避けられないビジネスで押さえておきたいポイントを探ってみました。
京都人は直接の指摘やものいいを避け、角が立たないいい方を考えます。
よそさんが「もう時間がないから帰ってください」とストレートにいうところを、「まだよろしいやん。お茶漬け(お茶)でも、どうです」という言葉で表現する場合もあるということです。
こういう気遣いが、誤解されて伝わっているのでしょう。
「食べたら(飲んだら)えらいめにあう」「やっぱり京都ってイケズ」のイメージが勝手に一人歩きしているのかもしれません。
理由を知れば、あいまいで柔軟な姿勢こそ、京都人のやさしさだと気づきます。
あらためて、京都人の流儀を教えてくれて「ほんまにおおきに」と言いたいですね。
この記事を書いた人: アン
生まれも育ちも大阪は堺。美味しいもんと落語を愛する“堺人”です。
運命学(占い)に関わること20年以上。開運マニアでもあります。
みなさまとのご縁を大切に外から眺めた京都の魅力をお届けします。
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