短編アニメの魅力を伝えたい「Gojo Short Animation Gallery」が紡ぎだす新しいカルチャー
皆さん、アニメはよく見ますか?
「忙しい毎日の楽しみは、アニメ鑑賞!」という方も意外と多いのではないでしょうか。
今回紹介する「Gojo Short Animation Gallery」は、西日本初の短編アニメーション専門ギャラリーです。
短編アニメーションとは、毎夜放映されている深夜アニメとは違うのでしょうか?
また、どうして京都で西日本初の専門ギャラリーをオープンさせたのでしょうか?
Gojo Short Animation Galleryのオーナーを務める谷川さん、毛利さんにインタビューさせていただきました。
短編アニメーションへの思いや、京都という土地でギャラリーを運営していく思いなどをたくさん伺うことができましたよ!
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短編アニメーションとは?
短編アニメーションとは、5~15分程度で短い尺のアニメのことです。
実験的なものや、アート的な要素があるものなど様々な内容の作品があります。
なんと、アカデミー賞の部門の一つには、「アカデミー短編アニメ賞」が用意されています。
この「アカデミー短編アニメ賞」は、その年アメリカで上映されたもっとも優れた短編アニメーション映画にあたえられます。
日本ではあまり馴染みがない短編アニメーションですが、世界的には広く知られているということが分かりますね。
Gojo Short Animation Galleryとは?
Gojo Short Animation Galleryは、2018年4月にオープンしました。
日本や海外の個性的な作品を上映し、短編アニメーションの魅力を紹介しています。
五条モールの202号室にあり、金・土・日・月曜日の週4日開館しています。
五条モールとは、町屋づくりのお茶屋さんをリノベーションして作られた小さなギャラリー・雑貨屋・飲食店の集合施設のことです。
なかは複数の部屋に分かれ、雑貨屋さんやバーなどの店舗が入っています。
Gojo Short Animation Galleryが入る202号室は、6畳ほどの広さ。
障子で2つの部屋に仕切られています。
手前の部屋の中央の壁には32インチのモニター、ヘッドフォン、2つの座席があります。
また、奥の部屋には23インチのモニター、ヘッドフォン、二人掛けの座席1つがあります。
モニターで短編アニメを観ながら、ヘッドフォンで音を聞くことができます。とても斬新な仕組みを採用されていますね!
また入口近くにはタブレット端末があり、こちらでも短編アニメーションを視聴することができます。
入場料は基本無料!
…ですが、投げ銭箱が用意され、お客さんは任意の金額を投げ銭することができます。
こちらも斬新な仕組みですね!
オーナーの谷川さん、毛利さんに聞く! Gojo Short Animation Galleryへの思い
今回は、このGojo Short Animation Galleryのオーナーを務める谷川さん、毛利さんにお話を伺うことができました。
谷川千央さん
当ギャラリー共同オーナー。ブルーハーツやBEAT CRUSADERSをはじめ、多くのバンドやミュージシャンのマネージャーを担当。ドリーミュージック内の一部門としてFOGHORNを設立後、独立。現在はひらのりょう、奥下和彦ほか短編アニメーション出身の映像クリエイターを擁する。foghorn.jp
毛利信之さん
京都市出身。東京の大学を卒業後、約10年間アパレル・アート業に従事。4年前京都に戻り、父が創業したヘッドハンティング会社STAGEで役員を務める傍ら、当ギャラリーの共同オーナーとしてアーティスト支援事業を行う。
作家に短編アニメーションを上映する場所を提供したい
──なぜ短編アニメーション専門のギャラリーを始めようと思ったのですか?
毛利さん:昔、東京のカフェで働いていたときに、谷川の会社に所属されている作家さんたちと展示会やアニメーションの上映会をしていました。
そのときに作家さんからは「アニメーションの上映機会が本当に少ない」という切実な声をよく聞いていたんです。
アニメーション作家の方々は、自分の作品を上映するだけでなく他の方々の作品も集めて上映するなど、「短編アニメーションそのものをより多くの方に知ってもらおう」と積極的に活動されています。
しかし上映のためには、場所を借りたり、たくさん告知をしたりと作家個人にかかる負担が非常に大きいのが現状でした。
それならば、京都で短編アニメーションの上映ができる場所を作って作家さんの手助けをしようと思い、以前から付き合いのあった谷川に話を投げかけたのがきっかけです。
谷川さん:一般の方にとってアニメはスタジオジブリなど、長編アニメーションの印象が強いと思います。
ただあまり知られていないのですが、カナダのオタワやフランスのアヌシーなど海外の映画祭では、短編アニメーションが上映されるとお客さんからコンサートのようなリアクションもあるんです。
日本でも、美大などを卒業された作家さんが数多くの素晴らしい短編アニメーションを作っていますが、上映出来る場所は限られています。
こんなに素晴らしいストーリーや絵を描ける作家さんが陽の目を見ないのはどうしたものかと思い、短編アニメーションを専門で上映できる場を提供したいと思ったわけです。
──なぜ、それを五条という土地で行おうと思ったのでしょうか?
毛利さん:カルチャーの新しい発信地として、五条モールが2013年9月にできました。
旧遊郭・五条楽園が変化していく時期に、宿泊地としてだけでなく、何かカルチャーを発信したいという思いがあってこちらが生まれたんですね。
オープン当初にここに入居していた方たちは私の友人で、ここに私はお客さんとして来るようなかたちでした。
今から1年ほど前に部屋がいくつか空いたときにオーナーさんから相談を受け、自分でも何かできないかと考えたのがここで始めたきっかけです。
谷川さん:東京でも自宅をギャラリーに改装したりしている作家さんはいますが、全国的にも短編アニメーションの専門ギャラリーってほとんどないんです。
そんな中で、歴史ある京都という街に日本の一番新しいクリエイティブを紹介する場をつくることは意義深いんじゃないか、と思いました。
自宅で観る「日常性」と、映画館で観る「特殊性」の間を取る
──こちらはモニターを観ながらヘッドフォンで音声を聴くという仕組みは斬新ですね。
谷川さん:ヘッドフォンで音声を聞く仕組みにした理由としては、2つあります。
1つ目は、音を出して五条モール内の他の店舗さんにご迷惑をかけたくないから。
2つ目は、自宅でVOD(ビデオ・オンデマンド)で観る「日常性」と、映画館で映画を観る「特殊性」の間を取りたいという思いからです。
ヘッドフォンでカップルが一つのモニターを観るような感覚で楽しんでもらえるように、リラックスしながらも集中して映像を観てもらえるようにしたいと考えました。
またお客様が順番待ちをしなくて済むよう、2つのモニターと1つのタブレット端末を用意しました。
ただ、複数のモニターは互いに光が反射してしまい見にくくなるので、狭い室内ですがあえて障子で間仕切りを入れています。
タブレット端末では、立った状態で自由に映像を楽しめます。短編アニメーションは尺が短いので、立った状態でも疲れずに観ていただけるのではと思います。
──鑑賞スタイルを定めないで、自由に見ることができるのは魅力的ですね!
内装についてはこだわりはありますか?
谷川さん:和のイメージを表現するために、床は畳にしています。
ただ、上がりやすいように畳の上にあえて透明な樹脂をひいています。
また襖の奥の室内には、石庭の雰囲気を盛り込みました。これも和のイメージですね。
壁は、作品が目に見やすいように黒をベースにしています。
予備知識がない方も気軽に楽しめる
──私のような短編アニメーションに詳しくない人がふらっと来ても映像を楽しむことはできますか?
谷川さん:Gojo Short Animation Galleryでは作品の概要や解説を紙にして、3モニター分用意しています。
短編アニメーションを知らない人でも気軽に楽しんでもらえるよう、どんな監督がどんな気持ちで作った作品なのかを解説しているんです。
なので、短編アニメーションに対する予備知識がない方でも楽しんでいただけますよ。
──こちらはグッズも置いてありますね。
谷川さん:最近のアニメーションの作家さんは、トートバッグやキーホルダーを作ったりと積極的に活動されている方が多いですね。
ただそれらのグッズはどこでも置けるわけではなく、東京で数店舗の雑貨屋さんに置いてあるだけというのが現状です。
京都にもグッズを置ける場を提供することができれば、作家さんの助けになるのではと思い、短編アニメーションの上映だけでなく、グッズも置くようになりました。
毛利さん:営業時間中はだれかしらスタッフが周りにおりますので、商品の購入時は声をかけていただければと思います。
――任意でお金を支払うことができる、投げ銭制が面白いですね。
この投げ銭制にした理由は?
投げ銭箱
谷川さん:短編アニメーションってメジャーなものではありません。
多くの方にまず知ってもらうことが目的としてあるので、お金を払わないと入れないという仕組みにはしたくありませんでした。
ただ、Gojo Short Animation Galleryを運営するにあたり、映像編集費や賃料などの実費がかかります。
そのため運営に手助けしたいという方がいれば、気持ちで投げ銭していただければとてもありがたいですね。
また、京都はお寺が多く、文化的にもお賽銭が根付いている土地でもあるので、少しユーモアも含めてそれもいいかなと思っています。
――五条周辺は宿泊施設も多くありますね。
外国人観光客はこちらによく来られますか?
谷川さん:外国人観光客の方は、全体の2割ほどですね。
代表的な長編アニメのほかにも、日本には魅力的な短編アニメーションがたくさんあるということも知っていただきたいですし、たくさん観てほしいなと思いますね。
毛利さん:外国の方はアートへの関心が非常に高いなと感じます。
また、有名な作品かどうかなど先入観なく、良い作品を気に行って観てくださる方が多いなと思います。
地道に長く続けて、京都の土地に根付くように
――今後の展望についてお聞かせください。
谷川さん:上映作品を増やしていくことで作家さんにもこの場所を知っていただきたいです。
派手な動きよりも、地道に長くやることを重視したいと思います。
「Gojo Short Animation Galleryがあるから、短編アニメを上映できるよね」と頼りにしてもらえる存在になるくらい長くやりたいですね。
ルーメンギャラリー(※)さんなど素晴らしい場所がご近所にありますし、この京都全体で新しいアニメーションや面白い映像を提供する場所がもっと増えていけば、日本に限らず海外の方にも広く知っていただけると思います。
(※ルーメンギャラリー:2015年4月にオープンした下京区下鱗形町にある映像専門ギャラリー。個人が制作した映像を中心に上映している)
毛利さん:京都という土地で短編アニメーションを上映する場を提供することで、このような発信の仕方があるのか、ということを京都の人に知ってもらえます。
今後は京都の企業さんや団体さんと関わる機会が増え、アニメーションで京都を盛り上げることができればと思います。
京都の方に受け入れてもらえるように、長く続けていきたいです。
せっかく京都でやっているので、京都という土地にもっと根付くお店にしていきたいなと思います。
谷川さん:京都出身の作家さんもそうですし、京都をテーマにした作品を自主制作でつくりたいという方がいればぜひ応募してきていただきたいと思います。
熱意をもって京都についてアニメーションで語りたいという方がいれば作品を前向きに観たいですし、可能であれば上映も考えたいと思います。
まとめ
今回取材させていただいたのは、短編アニメーション専門という、とても珍しいギャラリーGojo Short Animation Galleryさん。
以前、映像ギャラリーとミニシアターを特集する記事で取り上げました。
【京都市内】デートにおすすめ! 超個性的な映像ギャラリー・ミニシアター4選
そのときにオーナーの毛利さんとお話させていただいたのがきっかけで、今回単独インタビューをさせていただくことができました。
インタビューを通して、「アニメーション作家さんに上映の機会を提供したい」という谷川さん、毛利さんの熱い思いが伝わってきました。
また、お客さんに短編アニメーションの魅力を知ってもらう、リラックスして楽しんでもらうために様々な工夫をされていることが分かります。
作家さんとお客さん、双方にとって良い場所を作ろうとする姿勢に心を打たれました。
短編アニメーションを作っている作家さんにとっては、作品を上映できる貴重な場となります。
ご興味をもった作家さんは、ぜひお問い合わせしてみてください。
またGojo Short Animation Gallery は、2018年4月オープンというとても新しいお店で、内装がとても綺麗です。
ヘッドフォンで音声を聞きながら、モニターの映像を楽しむというスタイルが個性的で面白いと感じました。
自宅にいるようなリラックスした感じで、短編アニメ―ションを視聴できました。
短編アニメーションを視聴する機会はなかなかないと思うので、とても楽しめるはずです。
デートの途中に立ち寄り、鑑賞後は作品についての感想を言い合って仲を深めてみるのもいいかもしれません。
この先、Gojo Short Animation Galleryが京都を代表するアニメカルチャーの発信地として、日本だけでなく世界中から多くの人が足を運ぶ場所になっていくのではないでしょうか。
クリエイターの方は、良質なショートアニメ―ションを観て刺激を受けるのもオススメです。
五条近辺に訪れた際は、ぜひ一度Gojo Short Animation Galleryに足を運んでみてください!
【Gojo Short Animation Gallery】
場所 |
〒600-8114 京都府京都市下京区早尾町313−3 五条モール202号室 |
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営業時間 |
金土日月の13:00~19:00 |
席数 | 3席 |
https://twitter.com/gojo_anime | |
https://www.instagram.com/gojo_anime/ |
この記事を書いた人: 白麻呂
【しろまろ】京都の大学に通う色白男子。京都在住10年以上。京都の魅力を地元民の目線からお届け!マンガ、寝ることが大好き。
仲間の誕生日にはかかさずプレゼントを渡す「気遣い大魔王」。
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