ヨーロッパ企画代表・上田誠さんを単独インタビュー
みなさん。
「劇団」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
劇団四季のような、力強いパフォーマンスで感動を届ける劇団でしょうか?
宝塚歌劇団のような、華麗な歌とダンスで人々を魅了する劇団でしょうか?
実は、ここ京都にも、日本を代表する劇団があります。
どれだけ大きな劇団になろうとも、京都での活動にこだわり続ける劇団。
それが、「ヨーロッパ企画」です。
この劇団、どんな活動をしているかというと、
演劇のほかに、NHKやKBS京都でテレビ番組をしたり、ラジオ制作、Webサイト運営、書籍出版、スマホゲーム制作をしたり、はたまたカウントダウンイベントやフェスを開いたり。
あまりに他分野で活動をするため、“劇団“の枠には収まりません!
そんな「なんでもやりたい企画集団 ヨーロッパ企画」について、誕生秘話から、京都で活動し続けることへの想いを代表の上田さんから根掘り葉掘りうかがってきました。
ヨーロッパ企画とは?
改めて説明します!
同志社大学の演劇サークル内から生まれた、結成20年目の人気劇団「ヨーロッパ企画」。
結成から、コメディにこだわって作品を上演し続けている劇団です。
代表的なオリジナル作品は、「サマータイムマシン・ブルース(`05)」、「曲がれ!スプーン(`09)」など。
年に1回の本公演では、国内各地を巡演し、1万人以上を動員するほどの人気ぶり。
しかし、そんなヨーロッパ企画の活動は、多くの人たちがイメージする“劇団“とは一線を画します。
劇団だけど、活動の幅は多岐にわたっています。
余談ですが、私は取材前に対象に調査してから取材に臨むのですが……。
ヨーロッパ企画については知れば知るほどに謎が深まり
「たしか劇団だよね???」と、頭のなかが混乱しかけていました。
そんなヨーロッパ企画の代表は、上田誠さん。
上田誠さんといえば、昨年に「夜は短し歩けよ乙女」、今年は「ペンギン・ハイウェイ」など人気アニメ―ションの脚本を務める人気脚本家。
昨年には、「演劇界の芥川賞」といわれる岸田国士戯曲賞を昨年受賞したほどです。
上田誠さんのプロフィール
上田誠
1979年11月4日生まれ
京都府出身
劇作家/演出家/構成作家/映像
ヨーロッパ企画の代表であり、すべての本公演の脚本・演出を担当。
外部の舞台や、映画・ドラマの脚本、テレビやラジオの企画構成も手がける。
1998年、同志社大学在学中に、諏訪雅、永野宗典と共に「ヨーロッパ企画」というユニットを結成し、独立。
2006年に「株式会社オポス」を設立した。代表取締役は吉田和睦。
人気作品・人気番組を紹介!
ヨーロッパ企画は、多くのオリジナル作品や番組を手掛けていて、どれもが独創的かつ面白いものばかり。
その中でも人気が高いのは、映画化2つの舞台作品と、現在も放送中のTV番組とラジオ番組です。
演劇・映画「サマータイムマシン・ブルース」
夏、とある大学のSF研究会の部室。
SF研究を一切しない部員たちと、
その奥の暗室に居をかまえる、
カメラクラブのメンバーたち。
そんな日常に、ふと見ると、部屋の片隅に見慣れぬ物体。
「これってタイムマシンじゃん!」どうやらそれは本物。興奮する一同。
先発隊に選ばれた3人は早速タイムマシンに乗り込み、昨日へと向かうが…。
ヨーロッパ企画の青春空想科学グラフィティ!
演劇・映画「曲がれ!スプーン」
クリスマスイブ・町外れのうら寂れた喫茶店『カフェ・ド・念力』。
エスパーたちの秘密のパーティー。
そこへ迷い込む、痩せた男・神田。
さらに、テレビ局の女・桜井もやってきて……。
'09年、映画化とともに4度目の再演を迎えた、ヨーロッパ企画のスタンダード。
不遇をかこっている、すべてのエスパーに捧ぐ-
サイキック業界待望の、新時代突入コメディ!
テレビ番組「ヨーロッパ企画の暗い旅」
現在、KBS京都で毎週土曜日24:30~25:00で放送中。
ヨーロッパ企画が、「まだ見ぬおもしろさ」を自分の足で探すべく、さまざまな「旅」にでる、実験的ドキュメントバラエティです!
毎週毎週、どきどきわくわくしながら見られる番組です!
ラジオ番組「ヨーロッパ企画のブロードウェイラジオ」
現在、KBS京都ラジオで毎週日曜日21:30~21:59の時間で放送中。
DJは永野宗典と、藤谷理子の2人。
月替りゲストとともに、幻のブロードウェイへご案内します。
代表・上田誠さんと特別対談!
始まりは、同志社大学の演劇サークル内⁉
―そもそも同志社大学で演劇サークルを始めたきっかけはなんですか?
きっかけは、高校の学園祭でクラス劇をやって、「演劇っておもしろいな」と感じたことですね。
大学で、「同志社小劇場」という演劇サークルに入って、今の仲間と出会いました。
―そこから、どういう経緯でヨーロッパ企画が始まったんですか?
1回生の秋に、先輩2人と僕で、学園祭で劇を上演しようって話になったので、僕が脚本を書いて先輩が2人芝居をしたんです。それが、やっててめちゃくちゃおもしろくて。
「こんなにおもしろいなら、次もやりたい!」
そう思って、「ヨーロッパ企画」という”場所“を作って、そこから第2回、3回、4回と続け、今に至ります。
―やりたいことが先に来たんですね。
どういう演劇をしていたんですか?
第1回から、コメディをやり続けてます。
僕が関西人で、お笑いが好き、というのがありまして。
中でも、SFコメディをずっとやっていて。
僕が4回生のときに、「サマータイムマシン・ブルース」という作品でワッとお客さんが増えて。
メンバーが大学を卒業するタイミングで僕も大学を辞めて、劇団を続けていくことにしました。
その後、会社を作ってからも、やってることはほとんど変わっていないですけど。
―ヨーロッパ企画って本当に多くの分野で活動していて、独自の路線を進んでいますよね。
そもそも演劇だけじゃなく、あちこちのジャンルに興味があって、いろんなことをやりたいんです。
東京ではなくて、京都でやっているのも、その方がのびのび活動ができそうだな、と思うからで。
舞台もやりたいし、テレビもラジオも映画も、いろいろやりたい。
ヨーロッパ企画っていう場所があれば、そういうことが全部できる。
「ヨーロッパ企画の暗い旅」っていう番組をKBS京都で放送しているんですけど
自分たちで撮影から納品までするので、本当に自由にさせてもらえていて。
今週はトーク番組したいとか
別の回ではバラエティーっぽいこと
また別の回では、僕の本棚を修理する様子をドキュメンタリーにするとか。
規格外のことを色々試せる、野心的な番組になっています。
―規格外っていうのは、どんなものですか?
例えば、僕はバンドが好きで、よく聴くんですけど
結成した当時はすごいおもしろいなっていうバンドがあっても、メジャーデビューするとなんだか型にはまってしまうことがよくあって、それがすごく残念なんです。
もちろん、世間に通用しやすい形というのは存在するし、そこに合わせに行くのも大切だとは思いますが、独自性が損なわれたりもするかなって。
―なるほど。やっぱり売れたいから、世間が求めるものへと画一化してしまうんですね
だからヨーロッパ企画はなるべく、自分たちがやりたい形のまま続けられるように、って。
「暗い旅」も、そういうことができる稀有なテレビ番組です。
もともと、ヨーロッパ企画は、変わったメンバーやスタッフが集まりやすいんです。
わざわざ京都という辺鄙な場所で、劇団に加わろうという人たちですから。
そういう人たちが掛け算になって、どんなおもしろい企画ができるというのが勝負で。
「これは自分たちにしかできないおもしろさだ」と思えるようなものを、これからも作り上げていきます。
「企画性コメディ」とは?
―ヨーロッパ企画が演じている「企画性コメディ」ってどういったものでしょうか?
あまり聞き慣れない言葉なので教えてください!
例えば、
「演劇で普通それやんないだろ」
「演劇でそれするの大変じゃないのか」
っていうような、企画性の高いアイデアを思い付くときがあるんです。
そのときに、どうすればそれができるかを大真面目に考えて、実現にこぎつける。
たとえ、演じるうえでちょっと不自由がでたとしても、珍しい企画性がやれるなら、よしとする。
そしてそのなかで、役者と即興演劇をくりかえしながら、劇を作っていく、というやり方です。
「建てましにつぐ建てましポルカ」という作品も、そうして作りました。
迷路コメディと銘打って、迷路のように入り組んだ古城の中を、パーティー会場に戻ろうとする貴族の話なんですが。
舞台上に巨大立体迷路を作ってみて、「やっぱり動きづらいなぁ」なんて言いながら、役者といろいろ試しつつ物語を考えていった感じです。
―どうして始めようと?
大変ではあるんですけど、そういう変わった劇って、僕がお客さんなら見たいな、と。
「こんな劇、ないな」っていうのを作るのが、僕は好きなんで。
珍しいこと、自分たちしかやらなそうなことをやりたいんです。
京都の若者に向けて
―最後に、京都の若者に向けて、一言お願いします!
京都って、大学が多いから、大学生たちから何かが生まれて来やすい土地だと思います。
だから大学生のうちに、めちゃくちゃ動くのがいい、と思っています。
僕らも、大学時代に作った作品は、時間があった分、よく練れているな、と思うものが多くて。
最近上演した、「サマータイムマシン・ブルース/ワンスモア」も、大学生の頃に作っていた「サマータイムマシン・ブルース」を元にしていますし。
こういう大学時代の活動って、量・質ともに充実していて、今も財産になっています。
だから、やりたい活動があったら、ぜひやったほうがいいと思います。
インタビューを終えて
他とは違う、独自の路線を走り続ける劇団「ヨーロッパ企画」。
結成当初から変わらない「場所」が、そこにあるといいます。
「全員が同じ方向に向かっているわけではない。ただ、同じ場所で一緒にやっている感覚はあるんです。
ここでやり続ける限り、自然と新しいおもしろさが生まれていくなって思います。」
ありきたりな型にはとらわれない。
みんなでおもしろいものを作り上げるという劇団ならではの魅力が、今のヨーロッパ企画を形作っているのだと感じました。
(ゲームを見せてくれた上田さん)
あらためて、イベント・作品をどどんと紹介!
「ヨーロッパ企画」は、今、そしてこれから、どんな活動をするのでしょうか?
本公演以外にもヨーロッパ企画の独自イベントや、KBS京都のテレビ番組やラジオ番組も必見です!
DVD販売
テレビ番組
(毎週土曜日24:30~25:00にKBS京都、tvkテレビ神奈川で放送)
ラジオ
(毎週夜21時頃、京都、香川、名古屋、福岡で放送)
Web企画
地元・京都の、おもに僕らの生活圏を中心にご案内します!
京都に遊びに来られる際、立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
携帯アプリ
・ゲームムービー「ツッコマニア」
このゲームは本当におもしろい!はまってしまうコンテンツです!
Youtubeの実況がおもしろいので、そちらもご覧ください。
雑誌連載
・「ヨーロッパ企画の本 我々、こういうものです。」
謎に満ちたその魅力、おかしさ、アホさ、独特の演劇づくり......
すべてが詰まった一冊が、できました!
上田誠による短編戯曲「小さな出版社」書き下ろし、
18年間の活動をぎゅぎゅっと詰め込んだ作品解説、
「ヨーロッパ企画ができるまで」の裏話、
森見登美彦・嬉野雅道・本秀康 各氏による寄稿も掲載。
この記事を書いた人: 黄助
【きすけ】好きな言葉は「身近な人から幸せに」
人と自由と甘いものが好きなインターン学生。
大仏、富士山、琵琶湖などの日本一を目の当たりにし、現在は世界一に興味アリ!
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